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会長声明・意見書
2019.5.8 会長声明・意見書 クレジット過剰与信規制の緩和に反対する会長声明

当会は,現在,経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会割賦販売小委員会(以下、「小委員会」という。)において議論されている「クレジット過剰与信の規制緩和策(信用情報機関への照会義務・登録義務の免除)」について,「消費者保護の観点」から強く反対する。

 小委員会は,①包括信用購入あっせんのクレジットカード等を交付・付与する際,その利用限度額が10万円以下である場合(以下、「少額与信」という。),又は,②支払可能見込額調査(割賦販売法第30条の2第1項)の代わりにクレジットカード会社独自の「技術やデータを活用した与信審査方法」を使用する場合(以下,「技術・データによる与信」という。)に,いずれも指定信用情報機関への信用情報の照会義務(以下,「照会義務」という。同法第30条の2第3項)及び基礎特定信用情報の登録義務(以下,「登録義務」という。同法第35条の3の56第2項及び第3項)を免除する規制緩和策を検討している。

 しかしながら,①②いずれについても,利用限度額が少額か否かを問わず,照会義務及び登録義務は,多重債務防止のための最低限の義務として維持すべきである。なぜならば,信用情報の照会義務を免除すると,既に他社で多重債務状態にある者であっても,その情報を確認することなくクレジット与信することが可能となってしまうし,また,与信情報の登録義務を免除すると,その与信情報が他のクレジット会社の与信審査に反映できないことになるが,これではクレジット債務を業界全体で共有することにより多重債務を防止するという過剰与信規制の根本的な趣旨が没却されてしまうからである。

 とりわけ当会としては,小委員会が,少額与信の場合に事業者のコストや費用対効果の観点から上述の規制緩和策(照会義務・登録義務の免除)を導入することについては,後述(1)~(5)のとおり「消費者保護の観点」から強くこれに反対するものである。

(1)折しも成年年齢引下げが2022年4月に予定されているところ,若年者に対しては現在でも少額与信のクレジットカード等の交付・付与が行われているケースが見受けられるが,こうした状況において,少額与信規制緩和策を導入することは,若年者が多重債務者に陥る危険を増大させるものである。すなわち,「成年年齢引下げ」によって新たに成年となる若年層(18~19歳)については民法の未成年者取消権による保護を受けられなくなるという問題点が指摘されているところ,それに加え,例えば地方の高校卒業後に親元を離れ,多様なクレジットカード等を保有せざるを得ない環境に身を置き,無意識のうちに多様な決済システムの荒波に翻弄されつつ多重債務を抱える原因になってしまいかねないという懸念が生じるのである。

(2)最近のプリペイド決済のカード等は,オートチャージ機能によってクレジット債務に自動的に転換される機能が広がっていることなど,キャッシュレス決済の普及は少額与信であっても,(若年層に限らず)無意識のうちにクレジット債務の増大につながるおそれがあることが容易に予想される。

(3)現在クレジットカード会社の多くは,加盟店のポイントカード発行に関連して一人の消費者に対して複数のクレジットカード等を交付・付与している。
仮に少額与信の規制緩和策が制度化されてしまうと,各クレジットカード会社がクレジットカード等の種類を更に細分化して,各交付・付与時に利用限度額を10万円以下に設定するよう操作し,いずれのクレジットカード等についても照会義務及び登録義務を回避することが可能となってしまう。

(4)実際,日弁連が実施している破産事件記録調査によれば,負債額が100万円未満で破産に至った者の割合は,7.51%(2017年)と一定数存在し,かつ近年この割合は増加傾向にあり,少額与信だからといって多重債務のおそれが低いとは言い難い。

(5)現行割賦販売法第30条の2,同施行規則第43条第1項第1号は,利用限度額30万円以下のクレジットカード等の交付・付与時に,一定の場合,支払可能見込額調査義務が免除されることを既に規定しているが,免除の前提として,信用情報機関への照会により延滞事故発生等の事情が認められないこと(即ち多重債務状態にないこと)の調査を義務づけている。このことは,そもそも30万以下という少額与信であっても多重債務に陥る危険が否定できないことを法律が想定していることに他ならない。

 まとめ
以上のとおり,現行法の制度趣旨や確定解釈を変更してまで少額与信の緩和策を導入すべき合理性は存在しないし,むしろ上述のような多くの問題点・弊害があることを小委員会並びに立案担当者は重視すべきである。

以上

2019(平成31)年5月8日
旭川弁護士会 会長 小門 史子

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