選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃を内容とする法改正は、14年前の法制審答申以来、現在に至っても実現していない。
女性の多くが、現実には婚姻時に姓の変更を余儀なくされ、職業上も生活上も様々な不利益を被っている。自分らしさの一つとして婚姻前の姓を使い続けるという選択は、憲法に照らし、十分に尊重されなければならない。
平成18年(2006年)の内閣府の調査によると、60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対する者を上回った。平成21年(2009年)9月以降に複数の新聞社により実施された調査では、いずれも、選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回った。政府及び国会は、このような国民の声を真摯に受け止めるべきである。
また、女性にのみ課される再婚禁止期間についても、科学技術の発達により男女間に差を設けるべき根拠は既に失われているし、婚姻年齢の統一についても、今や憲法14条から当然に要請されることである。
さらに、婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は、子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても、相続分差別を撤廃すべきであるという意見が何度も述べられている。
平成5年(1993年)以来、国連の各種委員会は日本政府に、家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ平成21年(2009年)女性差別撤廃委員会は、家族法改正を最優先課題として指摘し、2年以内の書面による詳細な報告を求め、再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
旭川弁護士会は、選択的夫婦別姓の導入を始め、家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。
2010(平成22)年9月30日
旭川弁護士会 会長 富川 泰志