お問い合せ
Contact
お知らせ
ホーム | 北海道へのカジノ誘致に改めて反対する会長声明(2019 「カジノは北海道になじまない」)
会長声明・意見書等
2019.12.20 会長声明・意見書等 北海道へのカジノ誘致に改めて反対する会長声明(2019 「カジノは北海道になじまない」)

 本年11月29日、鈴木直道北海道知事が、苫小牧市を候補地とする北海道のIR(カジノを含む統合型リゾート)に関し、2021年7月末を期限とする国への誘致申請を見送る考えを表明しました。

 当会は、これまでも一貫してカジノ推進に反対しており、この知事表明を支持します。 なぜ、刑法では禁じられている賭博を、今、解禁し、しかも北海道の土地で行うのか、その必要性も合理性も全く認められないためです。当会は、2016年1月19日にも「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明を出していますが、以降、依然としてカジノ推進が必要な事情の変化は見受けられません。カジノ解禁推進法及び同法の制定を受けた特定複合観光施設区域整備法(いわゆる「カジノ解禁実施法」)に対しては、反社会的勢力がカジノ運営に関与して資金源とする可能性があること、マネーロンダリングのおそれを排除できないこと、ギャンブル依存症が生み出され生産性の喪失や社会的コストが増大することといった問題点が指摘されていますが、これらの問題点についても、北海道が十分な検討を行ってきたとはいえません。

 何よりも、私たち北海道の住民は、カジノを中心とするIRを北海道観光の要とすることを望んでいません。

(1)2019年6月時点での北海道全域の世論調査(北海道新聞)によれば、IR道内誘致に反対が72%、賛成26%であり、3月時点での調査に比べて反対が17%増加しています。多数の道民はIR誘致に反対しています。

(2)北海道は、この地域に住む人々が、もともとあった豊かな自然と文化を守り続けてきたことによって、対外的にもゆるぎない観光立国としての地位を獲得してきました。しかし、IR施設を建設する際には、森林は伐採され、地域社会の人々にはギャンブル依存や治安の悪化を引き起こしかねず、育まれた文化が破壊されかねません。カジノ予定地である苫小牧市植苗には、ラムサール条約に登録されているウトナイ湖周辺の湿地がありますが、これは水辺の美しく森林の豊かな、野鳥の随一の聖地です。これら豊かな自然を損なってまでIR誘致を推進すべきと北海道民が考えていないことは、上記調査より明らかです。経済面においても、これまで長い年月をかけて培ってきた、自然と共生し文化を育む北海道のイメージやブランド力が損なわれることによるマイナス効果は計り知れません。

(3)カジノ解禁推進法及びカジノ解禁実施法が予定するカジノ施設は民間賭博であり、賭博である以上、北海道が試算するIRの売上高年間1500億円の主たる原資は、賭博による利益であり、その利益は主として賭博によって負けた方の賭金によりもたらされるものです。私たち北海道の住民が、賭博で負けた方の賭金で経済的利益を享受し、それを是とするわけがありません。

 北海道へのIR誘致は道民に有益な経済効果をもたらしません。

(1)まず、北海道は、IRの売上高について年間1560億円、経済波及効果は2000億円と試算していますが、根拠の薄い希望的な数値といわざるを得ません。これはかつての日本の地方におけるリゾート開発ブームを想起させる甘すぎる試算です。日本の地方都市が、その最大の財産である自然を損なった上で、現実的でない試算に基づく施設を作った後の失敗はバブル時代に学んだはずであって、北海道も例外ではありません。「施設建設や大勢の集客で周辺地域が活性化するというバラ色の夢を追った結果、大半の開発計画が頓挫し、巨額の債務が企業や地元経済に残った」という指摘(大阪IR誘致に関する2019/10/21日本経済新聞)に耳を傾けるべきです。将来、道外または国外のIR運営主体から見放された巨大な元IR施設の廃墟が、北海道に無残な姿で残される事態は避けなければなりません。

(2)仮に、IRの売上高が上記のとおり実現したとしても、IRへの来場者の8割が日本人でありその大半が北海道民であるとの北海道の試算によれば、IRの主たる収益となるカジノの収益が多く道外または国外の運営主体に吸い上げられ、道民の利益とならないであろうことを見過ごすことはできません。

(3)また、IR施設内部への集客によっては、既存の周辺商業施設の収益はのぞめませんし、道内への観光客がIRに集うことになれば、既存の道内観光産業に大きな打撃をもたらしかねません。

(4)さらに、IR誘致について、世界的に多くのIRが経営破綻している事実から学ぶべきです。具体的にはアメリカのアトランティックシティや韓国の江原ランドなど、その例は枚挙に暇がなく、シンガポールやラスベガスの一部の成功例を殊更に取り上げるのではなく、客観的な事実から学んで判断すべきです。

 上記知事表明では、「今回の申請は見送るが、来たるべき時に挑戦できるよう準備する」として将来的な誘致可能性に含みを残していますが、以上のとおり、北海道民の世論はIR誘致に反対であり、北海道にIRを誘致すべき経済合理性も存在しないことから、当会は、今後の申請を含め、北海道へのIR誘致に改めて反対する次第です。

2019(令和元)年12月20日
旭川弁護士会 会長 小門 史子

〒070-0901
北海道旭川市花咲町4丁目旭川弁護士会館
TEL 0166-51-9527
FAX 0166-46-8708
会員ページログイン
Copyright(c) Asahikawa Bar Association All Right Reserved.