法務省は2021(令和3)年12月21日午前,死刑確定者3名について死刑を執行したことを明らかにした。そのうち小野光紀氏は再審請求中であった。死刑執行は2019(令和元)年12月26日に1名に対し執行されて以来であり,本年発足した岸田内閣,古川法務大臣による初めての死刑執行である。
当会は死刑執行があるたびに「死刑執行に抗議する声明」を発出してきたが,従前から述べてきたとおり,我が国において死刑事件でも誤判があったこと,死刑廃止は国際的な潮流となっており(OECD加盟国37か国中,国家として統一的に死刑を執行しているのは日本だけである。),我が国が死刑存置国であることにより他国と犯罪人引渡条約が締結できないなどの外交上の支障もあること等,今後も我が国で死刑執行を継続することには重大な問題がある。死刑は生命という最重要な権利に関する人権問題であり,かつ,我が国の刑罰制度のありように関する問題でもある。今すぐに,死刑に関する情報公開やこれらの問題に対する社会的な議論を進展させるべきである。
日本弁護士連合会は誤判,冤罪の危険性や,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016(平成28)年10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを宣言した。
また、2021年3月までに札幌弁護士会はじめ合計13単位会で死刑廃止を趣旨とする総会決議が成立するなど、単位弁護士会で死刑廃止に向けた動きが活発となっている。
当会は本件死刑執行について,再度,強く抗議の意思を表明するとともに,前記人権大会宣言の趣旨に沿った全社会的議論を深め,この議論が尽くされるまでの間,少なくともすべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。
2021(令和3)年12月24日
旭川弁護士会 会長 飯塚 正浩