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会長声明・意見書等
2022.4.26 会長声明・意見書等 旧優生保護法によるすべての被害者に対し早期の全面的救済を求める会長声明

1. 本年2月22日、大阪高等裁判所は、旧優生保護法に基づく強制不妊手術に関する国家賠償請求訴訟の控訴審において、国に対し、被害者らに賠償金の支払いを命じた。また、本年3月11日、東京高等裁判所も同様の判決を言い渡した。これら判決では、旧優生保護法による強度の人権侵害を認定し、国が同法に基づき優生施策を強固に推し進め、障害者らに対する差別や偏見が正当化・固定化されたために、請求の前提としての情報収集や相談機関へのアクセスが著しく困難であったことを認定した。これらは20年間の経過で当然に請求権が消滅するとする除斥期間(改正前民法724条前段)の形式的な適用を制限した画期的な判決である。

2. 旧優生保護法は、1948(昭和23)年に制定されて1996(平成8年)に母体保護法に改正されるまで、「不良」な子孫の出生を防止するという優生思想に基づいた強制不妊手術及び人工妊娠中絶を認めていた。同法による被害者数が増加したのは、国が自治体や国民に対して強制不妊手術の実施を強く働きかけた事情が存在するためである。特に、北海道における被害者数は多く、1956(昭和31)年には北海道衛生部・北海道優生保護審査会による「優生手術(強制)千件突破を顧りみて」と題する記念冊子が発行されて件数の多さが対外に示される程であった。
同法下における強制不妊手術及び人工妊娠中絶手術は、人の、子を産み育てるか否かについて意思決定する自由、意思に反して身体への侵襲を受けない自由を侵害するものであって、到底正当化できない。優生思想に基づき行われたかかる強度の人権侵害は、決して許されるものではない。

3. 2018(平成30)年1月30日、旧優生保護法による被害者が、仙台地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提起したことを皮切りに、全国各地で訴訟が提起されてきた。2019(平成31)年4月24日には「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給に関する法律」が成立し、優生手術を受けた者に対し320万円の一時金が支給されることとなった。しかし、同法では同じく子をもつ権利を害された、手術を受けた者の配偶者は救済されていない。また、金額も、強度の人権侵害に対する慰謝として足りるものではない。

4. 上記2件の控訴審判決は、被告国の申立てにより、最高裁判所の判断を仰ぐこととなった。しかし、救済は被害者らの存命中に適切になされるべきであって、被害者らが高齢であることを考慮すれば、最高裁の判断が出される前に全面的解決がなされるべきである。現に、北海道における訴訟2件のうち、原告の1名は訴訟係属中に亡くなられており、一刻の猶予もならない。

5. 当会は、国に対し、旧優生保護法により生じた被害につき真摯に反省し、早急に全面的な救済を行うこと、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう過去から学び対策することを求める。

 

2022(令和4)年4月26日

旭川弁護士会 会長 池田 めぐみ


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