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会長声明・意見書等
2023.8.8 会長声明・意見書等 「谷間世代」への一律給付実現を求める会長声明

1 司法は、三権の一翼として、法の支配を実現し国民の権利を守るための重要な社会インフラであり、法曹三者と呼ばれる裁判官、検察官、弁護士はこの司法の担い手として公共的使命を負っている。
 そこで国は、 高度な技術と倫理感が備わった法曹を国の責任で養成するために、1947(昭和22)年から現行の司法修習制度を発足させた。 この司法修習制度の中で、国は、司法修習生に対し、国費による給費を与えながら、修習専念義務等の職務上の義務を課し、裁判官・検察官・弁護士になる者として必要な知識・技術を習得させるために、すべての法曹分野での実務を実習させ、多くの司法修習生を養成してきた。

2 しかしながら、この司法修習生に対する給費制度は、2011(平成23)年に廃止され、無給での司法修習を強いられることとなった。 しかし、給費制度は廃止された一方で、修習専念義務は依然として負っていたため、生活費を稼ぐためのアルバイトなどをすることも自由にはできなかった。そのために、平成23年に修習生となった新第65期以降の司法修習生の多くは、司法修習期間中に生活費等が必要な場合は、 国からその費用の貸与を受けなければならなかった。
 この貸与制に対しては、多くの批判の声が上がり、全国の弁護士会や日本弁護士連合会が給費制の復活を求める様々な活動をした結果、2017(平成29)年に裁判所法が改正され、第71期司法修習生に対する修習給付金制度が創設された。
 もっとも、貸与制のもとで司法修習を受けた新第65期から第70期までの世代(いわゆる「谷間世代」)に対しては、何らの是正措置がとられず、現在も谷間世代においては不公正 ・ 不平等な状態が継続している。

3 現在、谷間世代は、約1.1万人にのぼり、全法曹の約4分の1を占めるが、この谷間世代は、現在の司法の担い手として、様々な公益的な活動の場にて活躍している。
 当会でも、谷間世代の弁護士は、社会的弱者の救済をはじめ、いじめ問題などの社会的意義を有する間題への取組、司法アクセスが難しい地域への司法サービスの提供などの権利擁護の実現に努めるほか、当会の副会長や各委員会の委員長を務めるなど、弁護士会を支える存在ともなっている。
 そしてなにより、これからもあらゆる法律問題、社会問題に対して、その能力を発揮して国民の権利・利益を擁護するための公共的使命を果たすことが大いに期待されている。
 しかしながら、谷間世代の弁護士は、弁護士となったその当初より貸与金の返還という債務を負わされていることから、経済的不安のために、自分の希望する国民の権利・利益を擁護するための活動に専念することに躊躇を覚えるといった声が上がっている。 すなわち、貸与金の返済という経済的な事情が、国民の基本的人権の擁護及び社会正義の実現という弁護士の使命を全うすることへの足かせになっている現状がある。このような状況は、国民の権利・利益を擁護する観点からも是正されなければならず、その是正を行うことは国の基本的な責務である。

4 この間題は、司法の場でも言及され、名古屋高等裁判所2019年5月30日控訴審判決の中では、「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならない(中略)例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられるが、そのためには、相当の財政的負担が必要となり、これに対する国民的理解も得なければならないところであるから、その判断は立法府に委ねざるを得ない。」とされている。
 また、立法府においても多くの国会議員から、国による谷間世代への一律給付の実現に賛同するメッセージが寄せられ、その総数が2023年3月には衆参両院の合計議員数の過半数に達しており、いよいよ立法府の判断が迫られている状況となっている。

 以上のような現状を踏まえ、当会は、国に対し、無給で司法修習を受けた谷間世代全員への給付すなわちー律給付の実現を求めるものである。

以上

 

2023(令和5)年8月8日

旭川弁護士会 会長 万字 達

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