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会長声明・意見書等
2023.8.28 会長声明・意見書等 特商法平成28年改正における5年後見直し規定に基づく改正を求める会長声明

(「定期購入トラブル」の急増および「チャットを利用した勧誘の規制等の在り方に関する内閣府消費者委員会意見(令和5年8月10日)」を踏まえて)

1 特定商取引法(以下「特商法」といいます。)は、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者への規制や民事ルールなどを定める法律です。これまで何度も改正を重ね、2016 (平成28) 年には比較的大きな改正をしましたが、社会の変化に適正迅速に対応するために、積み残しの課題を念頭に、附則6条に「施行後5年を経過した場合に特商法の施行状況に検討を加え、必要があると認めるとき」は、政府が「所要の措置を講ずるものとする」と定められています。
 今般、2017(平成29)年12月1日の施行から2022(令和4)年12月で5年を経過しましたが、この間、①高齢化社会の進展に伴い、認知症などの十分な判断ができない高齢者を対象とした訪問販売や電話勧誘販売による被害の増加が見られます(例えば、突然の訪問や電話で、「お宅の瓦が台風の影響でずれている。火災保険を使って無料で修理ができる。保険申請も代行する。」等のトラブルが増加しています)。②また、スマートフォンやSNSの急速な普及によって全世代においてインターネット通信販売、投資詐欺・副業詐欺などのトラブルも増加しています。③さらには、20代を中心とした連鎖販売取引(マルチ取引)によるトラブルも増加しており、今後も民法の成年年齢引き下げに伴う被害増大も予想されています。

2 このような被害状況を踏まえると、「現行の特商法の施行状況において被害防止のための措置を講ずる必要性のあること」は明らかであり、被害が増加している取引類型を中心とした以下のような特商法の改正を早急に行う必要があります。

(1) 第1に、訪問販売や電話勧誘販売においては、以下の改正が必要です。

ア 消費者庁の2014年調査で96.4%が「勧誘を全く受けたくない」と回答していることからすれば、事前拒否者への勧誘禁止制度の導入が不可欠です。この点、現行特商法3条の2第2項や同法17条で、消費者が契約を締結しない意思を表示した場合に事業者の勧誘を禁止していますので、訪問販売については「訪問販売お断り」という張り紙等について特商法3条の2第2項の適用があることを明文で規定すべきです。同様に、電話勧誘販売においても、特商法17条の規律をさらに進めて、例えばDo-Not-Call制度(電話勧誘を受けたくない人が電話番号を登録機関に登録し、登録された番号に事業者が電話勧誘することを禁止する制度)のような、消費者が事前に電話勧誘販売を拒絶できる制度を導入すべきです。

イ また、訪問販売や電話勧誘販売は、店舗を持つことなく営業を行うことが可能であることから、信用力の低い事業者の参入も容易であり、不正な勧誘行為を行いながらその所在を変えて事業を繰り返すことも可能となっています。そこで、訪問販売や電話勧誘販売においても、店舗販売に準ずる信頼を確保するために、事業者の登録制を導入すべきです。

(2) 第2に、通信販売においては、以下の改正が早急に必要です。

ア 近年、消費者が利用するSNSなどに販売業者からのメッセージが送信されたり、SNS等の利用中に表示される広告をきっかけとしたトラブルが多く見られます。このようなインターネットを利用した積極的勧誘については、不意打ち性、攻撃性、密室性などの点で電話勧誘販売と類似の特徴があり、危険性においても何ら変わりがないため、通信販売にも電話勧誘反対と同様の行政規制やクーリングオフ制度・不実告知による取消権といった民事上の規制を及ぼすべきです。
 この点、内閣府消費者委員会「デジタル化に伴う消費者問題WG」は、令和5年8月報告書(チャットを利用した勧誘の規制等の在り方について)で、チャットを利用した勧誘は、短文で断片的なメッセージを送り、相手の反応に応じで清報を変更でき、一覧性がなく、不意打ち性、密室性等、その心理的影響を考慮すると、現行の広告規制ではなく、チャットを利用した勧誘に対する規制が必要であると提言しました。これを受けて、同委員会も同年8月10 日に「チャットを利用した勧誘の規制等の在り方に関する消費者委員会意見」を発出し、チャット勧誘に行政規制、民事ルールを設けることなどについて、消費者庁に対し十分な検討を求めました。
この分野における速やかな立法措置が講じられるべきです。

イ また、ウェブサイト上で購入の申込みを受け付けている通信販売業者が、ウェブサイト上での解約受付体制を設けていないケースや、近年増加しているサブスクリプション契約でも解約方法が分からない等のトラブルが発生しています。また、同様に「電話による解約のみ受け付ける」旨を表示しておきながら、消費者が架電してもいっこうに繋がらず、解約ができないケースも見受けられます。
 そこで、ネット通信販売において消費者が解約を希望する場合、契約申込みと同様の方法(ウェブサイト上の手続き)による解約申し出の方法を定めることを通信販売業者に義務付け、迅速・適切に解約・返品に対応する体制を整えさせることが必要です。

ウ さらに、インターネットやSNS上の詐欺的な広告や勧誘をみて通信販売を利用した消費者が被害を被った場合でも、その広告上に通信販売業者の氏名や名称、住所などが十分に記載されていないことから、加害者等の特定ができず、被害回復を図れないケースが多くみられます。そこで、連絡先が不明な通信販売事業者及び当該事業者の勧誘者等により自己の権利を侵害された者は、SNS事業者、プラットフォーマー等に対し、通信販売業者及び勧誘者を特定するための情報の開示を請求できるようにすべきです。

工 最後に、インターネットを利用した定期購入トラブルに対する更なる対策が急務です。
 2021年改正特商法は、詐欺的な定期購入商法(例えば、初回無料やお試しとの表示があるのに、実際には定期購入が条件となっていたなどの商法)に対する対策として、通信販売の申込段階において、商取引を行う上で通常必要な基本的事項(商品の分量、価格、支払時期、引渡時期など)について、①表示の義務づけ(法12条の6第1項)、②誤認させるような表示の禁止(同第2項)、③上記①②に違反した表示に係る誤認取消権(法15条の4)などの規定を新設しましたが、国民生活センターによれば、定期購入被害は2022年末から急増し、2023年2月には13,000件で昨年の2倍を超えている状況です。
 最終確認画面で、初回分と2回目以降の契約条件を分離表示することをガイドライン等で明示的に禁止していないことによる脱法事例が多発していると考えられることから、かかる分離表示を禁止し、支払総額の明瞭表示を義務付けるなどの抜本的法改正が必要です。
 また、近時の特徴的手口の1つとして、「いつでも解約可能」との広告をみて、1回分申し込んですぐ解約しようと最終確認画面に進み、注文確定ボタンを押したが、「今だけ特別割引クーポン1000円引き」というポップアップ広告が表示され、これを押すと、先ほどと同じ形式の最終確認画面で値引きした金額が表示されるが、実は、最終確認画面の利用規約(小さな気付きにくいスクロール画面)に「クーポン利用者は最低5回のコース」と記載されていて、業者が解約に応じないといった事例が報告されています。特別クーポンの表示は、別契約に変更する新たな広告であり、広告表示義務(特商法11条)違反と考えられことから、厳正な行政処分がなされるべきです。
 さらに、健康食品や化粧品の定期購入トラブルも激増しており、例えば美容クリームの定期購入契約において、「目元のたるみやシワが3日で消える」などの広告がきっかけで申込をしてしまうという事例も報告されています。特定申込画面において契約条件に関する誤認取消権(法15条の4)が認められるのと同様に、広告画面においても、商品の品質・効能もしくは役務の内容・効果に関する表示事項について、人を誤認させる表示をしたときは取り消すことができる旨の規定を新設すべきと考えます。

(3) 第3に、連鎖販売取引においては、近時、投資や副業などを対象とした「モノなしマルチ商法」が増加し、その勧誘方法もSNS等を利用して勧誘者の素性も分からない場合も多くなっており、個別取引ごとに事後的に救済することが困難な状況となっています。
 そこで、連鎖販売取引については、行政庁において事業者が行おうとする連鎖販売取引業の適法性・適正性等を事前に審査する手続を経ることを内容とする開業規制を導入すべきです。
 また、物品販売等の契約後に、はじめて「新規加入者を獲得すれば紹介利益が得られる」旨を告げてマルチ取引に誘い込む、いわゆる「(紹介利益の)後出しマルチ」のトラブルも増加しているところ、その危険性は通常のマルチ取引(特定利益をもって人を勧誘する典型例)と同様であることから連鎖販売取引の拡張類型として明文で規定すべきです。

3 以上のとおり、当会は、国に対して、早急に特商法を改正するよう求める次第です。

以上

 

2023(令和5)年8月28日

旭川弁護士会 会長 万字 達


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