当会が本年11月18日付声明でその危険性を指摘した特定秘密保護法案は、国民各層から数多くの反対もしくは慎重審議を求める意見表明が相次いでいたにも関わらず、同月26日に採決が強行され、衆議院を通過した。
同法案は、広範な特定秘密の指定によって「知る権利」を制約するのみならず、国会議員の国政調査権すら及ばなくすることで国会の権限を大幅に制限する点、広範かつ不明確な犯罪類型と処罰を規定している点、行政機関の長の恣意的な特定秘密の指定に歯止めをかける方策にほとんど実効性がない点、特定秘密に触れる極めて多くの公務員と民間人並びにその家族・関係者の身辺調査がなされてプライバシーが侵害される点など、そのどれ1つとっても、それだけで十分に国民主権と人権保障の原則に重大な影響を及ぼすものである。
これらの重大事項につき、衆議院において十分な審議が尽くされたとは言い難く、4党による修正案においてもその危険性は何ら減じられていない。また、一度しか開催されなかった公聴会においては与党推薦の公述人を含むすべての公述人が同法案に反対ないし慎重な意見を述べたにも関わらず、その成果を一切法案に反映させることなく、衆議院での強行採決に至った。
国民主権を形骸化しかねない法案について、国民各層からの相次ぐ懸念を無視する形で採決を強行したことは、同法案自体がはらむ非民主的性格を先取りするかのようであり、二重の意味で国民主権の基本原則に反すると言わなければならない。
今臨時国会の会期はあとわずかである。良識の府である参議院においては、国民各層からの相次ぐ懸念を真摯に受け止め、同法案を強行採決する愚行は慎むべきである。
当会は、同法案の衆議院強行採決について強く抗議するとともに、参議院において速やかに廃案されることを求めるものである。
2013(平成25)年12月3日
旭川弁護士会 会長 小林 史人