昨年11月末、第66期司法修習生8名が最高裁判所に任用された上で旭川地方裁判所へ配属され、本年9月末まで、裁判所、検察庁及び当会に所属する弁護士の事務所において、実際の事件に触れる修習を行っている。
ところで、司法修習生は、司法を担う法曹としての高い専門性を修得するため1年間司法修習に専念する義務を負い、兼業・兼職が禁止され、収入を得る道はない。当会に配属された8名の修習生は、札幌市周辺、関東地方、関西地方から修習を受けるために旭川市に転居した者ばかりであるところ、引越費用や住居賃借に対する経済的支援策は何も無い。同様に、旭川での修習を終え司法研修所での修習を受けるための引越費用の援助も無く、研修所の寮に入寮できる保証も無く、入寮できなかった場合の補償も無い。修習を受けるための経費ではないが、弁護士志望の修習生にとっては、就職活動のための交通費や宿泊費も大きな負担となる。
司法修習は、わが国の司法を担う法曹を養成する制度であり、司法の基盤を整備する事業として、本来、国家予算をもって賄うべきものである。修習生は、修習専念義務が課せられ、アルバイトが一切禁じられているのであるから、そのための代償措置が設けられてしかるべきところ、現行の「貸与制」は本人負担を先送りするだけのことであるから代償措置になっていない。国家財政の負担軽減を理由に戦後六十数年間続いた「給費制」を廃止し、個々の司法修習生が受ける現実の負担を無視して「貸与制」を実施したことは誤りであって、早急に是正されねばならない。
当会は、修習生に対し修習専念義務を負担させることへの十分な代償措置を講ずるため、「給費制」の復活を視野に入れた経済的支援策の早急な実施を求めるとともに、新第65期及び第66期修習生に対する補償措置が採られることを求めるものである。
2013(平成25)年1月15日
旭川弁護士会 会長 辻本 純成