深刻な多重債務問題を解決するため、上限金利の引下げ、総量規制(収入の3分の1以上の貸付の禁止)等を内容とする改正貸金業法完全施行(2010年6月)がなされてから、2年余りが経過した。
この改正によって、5社以上の借入れを有する多重債務者は法改正時(2006年12月)の230万人から44万人(2012年3月)に激減し、自己破産は17万件(2006年)から10万件(2011年)に減少、多重債務による自殺者は1973人(2007年)から998人(2011年)に半減するなど、大きな成果が上がっている。
他方、本年5月23日、自民党の「政務調査会財務金融部会小口金融市場に関する小委員会」は、正規の業者から借りられない人がヤミ金から借入れをして潜在的なヤミ金被害が広がっているとか、零細な中小企業に短期融資の需要があるとかいう理由を挙げて、利息制限法・出資法の上限金利について年30%を目途とする変動金利とし、総量規制を撤廃する案を取りまとめており、今月に入って、民主党の作業部会にも、これと同様の意見を取りまとめようとする動きがあると報道された。
しかし、ヤミ金については、相談件数も警察の検挙数も減っており、被害規模も小型化するなど、その被害が広がっていることを示すものは何もない。正規の業者から借りられない人に対しては、簡単に借りられるようにするのではなく、「高利に頼らなくても生活できる」セーフティネットの再構築や相談体制の更なる充実こそが重要な施策である。
日本の中小企業がリーマンショック以降長引く不況や円高によって深刻な影響を受けていることは事実であるが、これに対し、国は、緊急保証、セーフティネット貸付、金融円滑化対策等を実施し、地域金融機関等による支援策を行っている。このような現状下で必要な対策は、「短期の高利の資金」提供ではなく、総合的な経営支援策である。
当会は、誤った立法活動によって改正貸金業法の成果が踏みにじられることのないよう、これら一部国会議員の動きに強く反対の意思を表すものである。
2012(平成24)年7月23日
旭川弁護士会 会長 辻本 純成