2017(平成29)年12月19日,東京拘置所において二人の死刑囚に死刑が執行された。
二人とも再審請求中の死刑執行である。うち,一人は犯行当時19歳で,犯行時少年の死刑囚に死刑が執行されたのは永山則夫元死刑囚(1997年執行)以来である。
両件とも,現行法の再審制度の問題(死刑判決に対する再審請求に執行停止効がないこと)を提起するものであり,加えて犯行当時少年であった者に死刑を科すのが妥当かという大きな問題をはらんでいる。
また,死刑は執行してしまうと権利回復はもはや不可能であり,取り返しのつかない結果となるが,刑事司法制度は人の作ったものであり,その判断,運用も人が行う以上,誤判・えん罪の可能性そのものを否定することはできない。
我が国において,死刑事件について,すでに4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件),えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。さらに,2014(平成26)年3月27日には,死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始が決定され,同時に「拘置をこれ以上継続することは,耐え難いほど正義に反する」として,死刑および拘置の執行停止も決定されて,現在でもなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされた。
世界を見ると2016(平成28)年12月末日現在,法律上死刑を廃止している国と事実上死刑を廃止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)の合計は141か国であり,世界の中で3分の2以上を占めている。死刑執行国は23か国である。
加えてOECD加盟国の中で死刑制度を存置している国は日本,韓国,米国の3か国のみであるところ,このうち韓国は約20年間死刑を執行しておらず事実上の死刑廃止国であり,米国は2017(平成29)年6月の時点で19州が死刑廃止を宣言している。結局,OECD加盟国のうち死刑を国家として統一して執行している国は日本のみである。
以上の通り,死刑廃止は国際的な潮流となっており,未だに死刑制度を存置させ死刑を執行しているわが国は,国連人権(自由権)規約委員会から死刑廃止に向けた行動を取ることの勧告を受け続けている。
このような中,日本弁護士連合会は誤判,冤罪の危険性や,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016(平成28)年10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを宣言した。
当会は,本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,前記人権大会宣言の趣旨に沿った全社会的議論を深め,この議論が尽くされるまでの間,少なくともすべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。
2017(平成29)年12月28日
旭川弁護士会 会長 飯塚 正浩