日本弁護士連合会は、第59回人権擁護大会(本年10月7日)において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。
その理由として、①袴田事件のように誤判、えん罪を完全に防ぐことが他ならぬ人間自身が判断する以上不可能である現実、②第69回国際連合総会(平成26年12月18日)における「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議の採択など国際社会の潮流を我が国も無視できなくなっていること等があげられた。
それにもかかわらず、本年11月11日、福岡拘置所において、1名に対する死刑が執行された。かかる宣言採択後わずか1ヶ月後の死刑執行は、上記宣言の方向性に反するものである。
平成28年10月末日現在、法律上の死刑廃止国102か国に加え、事実上(10年以上死刑執行のない国等)の死刑廃止国も38か国に及んでおり、これら法律上及び事実上死刑廃止国の合計は世界の約3分の2の国家を占めるに至っている。
このような国際社会の趨勢の中で、平成32年、我が国で国際連合犯罪防止刑事司法会議が開催される予定である。同会議開催に向けて、我が国においても、このまま死刑を存置することが適切であるかを冷静に検討しなければならない時期が到来している。
刑事司法制度は、人が作ったものであり、その運営も人が行うものである以上、誤判、えん罪の可能性を否定することはできない。そして、死刑は、生命自体を滅却することから、取り返しのつかない点で他の刑罰と本質的に異なるものである。
今こそ、あるべき刑罰制度構築のために、刑事司法のあり方や死刑制度を含む刑罰制度全体のあり方を議論すべきであり、前記宣言によりその営みは緒に就いたところである。
以上の通り、今回の死刑執行は、我が国における、あるべき刑事司法のあり方及び死刑制度を含む刑罰制度全体のあり方についての重要な議論の始まりに水を差すものである。
かかる理由から、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、上記宣言に基づき、死刑執行の停止を求める。
2016(平成28)年12月13日
旭川弁護士会 会長 廣田 善康