法務省は2019(令和元)年12月26日,福岡拘置所において再審請求中であった1名に対し死刑を執行したことを明らかにした。
死刑執行は同年の8月2日に2名に対し執行されて以来であるが,同年10月に就任した森まさこ法務大臣による初めての死刑執行となる。第2次安倍内閣における死刑執行は17回目,執行数は合計39名に上る。
当会では死刑執行があるたびに「死刑執行に抗議する声明」を発出してきたが,従前から述べてきたとおり,我が国において死刑事件でも誤判があったこと,死刑廃止は国際的な潮流となっており,我が国が死刑存置国であることにより他国と犯罪人引渡条約が締結できないなどの外交上の支障もあること等,今後も我が国で死刑執行を継続することには重大な問題がある。死刑は生命という重要な権利に関する人権問題であり,かつ,我が国の刑罰制度のありように関する問題でもある。今すぐに,死刑に関する情報公開やこれらの問題に対する社会的な議論を進展させるべきである。
日本弁護士連合会は誤判,冤罪の危険性や,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016(平成28)年10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを宣言した。
さらに、日本弁護士連合会は2019(令和元)年10月15日、意見書「死刑制度の廃止並びにこれに伴う代替刑の導入及び減刑手続制度の創設に関する基本方針」を取りまとめ、同月25日付けで内閣総理大臣、法務大臣、衆議院議長及び参議院議長宛てに提出した。
また、2019年中に札幌弁護士会、大阪弁護士会等で死刑廃止を趣旨とする総会決議が成立するなど、単位弁護士会で死刑廃止に向けた動きが活発となっている。
当会は本件死刑執行について,再度,強く抗議の意思を表明するとともに,前記人権大会宣言の趣旨に沿った全社会的議論を深め,この議論が尽くされるまでの間,少なくともすべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。
2020(令和2)年1月29日
旭川弁護士会 会長 小門 史子