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会長声明・意見書等
2014.10.21 会長声明・意見書等 商品先物取引法における不招請勧誘禁止の緩和に反対する声明

 商品先物取引法214条9号は,いわゆる不招請勧誘を禁止している。不招請勧誘の禁止は,営業規制の一種であり,勧誘の要請をしていない顧客に対しての訪問または電話による勧誘を禁止することである。
商品先物取引は,もともとそのしくみが複雑で消費者に理解しがたく,かつ,リスクの高い取引であることに加え,悪質な業者が,突然の電話や訪問による勧誘によって商品先物取引の知識や経験に乏しい消費者を取引に巻き込んできたことで深刻な被害を与えてきた実態がある。こうした消費者被害を防ぐためには行為規制の強化だけでは不十分であり,顧客の要請に基づかない勧誘自体を禁止すべきであるという,消費者・被害者関係団体等の強い要望によってようやく,2009年7月の商品先物取引法改正で不招請勧誘の禁止が実現したものである。そしてこの規制の結果,商品先物取引に知識も関心もない一般消費者である顧客に対して,突然の訪問・電話勧誘により不意打ち的にハイリスク・ハイリターンの取引に引きずり込み顧客に深刻な損害を与える商品先物取引被害は激減して多くの成果を上げている。
 ところが,経済産業省及び農林水産省は,商品先物取引法214条9号の例外を定める商品先物法施行規則10条の2の改正案を現在検討中である。その改正案では,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,熟慮期間等を設定した契約の勧誘(顧客が70歳未満であること,基本契約から7日間を経過し,かつ,取引金額が証拠金の額を上回るおそれのあることについての顧客の理解度等を書面で確認した場合に限る)を,不招請勧誘禁止の適用除外とするとされている。また,同規則に合わせて,商品先物取引業者等の監督の基本的な指針(以下「監督指針」という)も,改正が準備されている。
 しかし,一般消費者における商品先物取引被害が,不招請勧誘規制の導入によりようやく激減したのに,再び規制を緩和しては再度被害件数が増えることは必至である。7日間の熟慮期間の規制は,海外先物においても既に14日間の熟慮機関を設ける規制があり理解度の書面確認も行われてきたが,いずれも顧客保護のために全く機能しなかった。商品先物取引業者従業員の甘言を信じ込んでいる顧客にとっては,7日間で取引のリスクを正しく理解することは難しく,その状態のまま理解度の書面確認をしても顧客の保護につながらないのである。
 商品先物取引法施行規則及び監督指針の改正は,不招請勧誘を実質的には解禁するに等しい。しかも昨年12月には,不招請勧誘禁止規定違反があるとして商品先物取引業者が行政処分を受けている事実がある。現時点で,不招請勧誘禁止規制の緩和が許容されるような営業実態には全くないのであって,現行の規制は維持されなければならない。不招請勧誘禁止の緩和は顧客の保護に欠けることとなることは明らかであるから,消費者の権利保護の観点から看過できない。
 よって,今般の商品先物取引法施行規則及び監督指針の改正については強く反対するものである。

2014(平成26)年10月21日
旭川弁護士会 会長 小林 史人

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