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会長声明・意見書等
2010.6.25 会長声明・意見書等 司法修習生に対する給費制維持を求める会長声明

 裁判官・検察官・弁護士などの法律家になるためには、国が定める1年間程度の司法修習を受け、法律実務について実務の現場で学ぶ必要があります。主に机上の勉強だけを経て試験で選抜された者が、いきなり法律家として仕事を始めることには無理があり、そのためにもこの期間に十分なトレーニングを行う必要があるのです。そのため、司法修習を受ける者(司法修習生といいます)には、修習に専念する義務が課されており、アルバイトなどで生活費を稼ぐことは禁じられ、そのかわりに生活の不安なく修習に専念できるように国家公務員の大学卒初任給程度の給与が支払われてきました。
 間もなく、こうした司法修習生の身分に、大きな変化が訪れようとしています。平成16(2004)年に改正された裁判所法がいよいよ施行され、このままでは今年11月に司法修習を始める司法修習生からは給与が支給されなくなり、かわりに、生活費に困窮する者に対しては、月額23万円から28万円、年間で276万円から336万円が、国から貸与される制度(貸与制)になります。
 しかし、昨年の日弁連の調査では、既に現在の司法修習生のうち過半数の者が、司法試験合格までの間に奨学金等の負債を負っており、その平均額は約318万円、最高では1200万円にも達しています。この上更に上記の300万円前後の負債が加わることは、司法修習生の質に大きな変化をもたらすことになります。
 すなわち、そのような経済的な負担が伴うことにより、今後は経済的に恵まれない家庭の出身者が事実上法律家への道を断念するという事態が多く生じることは明らかです。やがては貸与を受ける必要のない者しか法律家になれない、更には法律家の殆どが富裕層出身者で占められることになりかねません。貧困と格差の問題が指摘される今日、その問題点を解消するために弁護士をはじめとする法律家の活動は重要ですが、司法の担い手たる裁判官、検察官、弁護士が富裕層出身者で占められることになると、裁判において、社会的・経済的弱者に対する共感を欠く傾向が生じ、公正・公平な司法の実現が損なわれる恐れさえあると指摘せざるを得ません。
 加えて、司法修習は、埼玉県和光市にある司法研修所だけで行われるわけではなく,全国各地の裁判所・検察庁・弁護士会において行われ、旭川にもこの3年間、毎年12名の司法修習生が配属されています。このことが,司法修習生に司法過疎の現実に触れる機会を与え、地方での弁護士の定着に寄与した面があることは間違いありません。しかし、司法修習生の配属については,希望の偏り等により司法修習生の希望通りの配属にはできにくい現実があり、修習地は最高裁判所で決定しており、司法修習生にはこれを受諾するかどうかの自由しかありません。このため本意ならず就職希望地とは遠隔した地に配属された司法修習生の中には、貸与制の下では、就職活動の困難性・費用負担などを理由として、司法修習を断念する者が多く出かねない状況です。このことは、規模の小さい裁判所等での司法修習の実施を崩壊させかねません。司法修習生が、皆さんに対する司法サービスの必要性を実感する機会が失われかねないのです。
 以上の理由で、当会は司法修習生についてその貸与制への移行に反対し、裁判所法を改正して給費制を維持することを求めます。
 裁判所法改正法が施行される11月1日まで、時間が切迫しております。旭川弁護士会としては、今後給費制存続を求める請願署名などの運動に取り組んでいく所存ですが、多くの市民の皆さんにこの運動の意味をご理解いただき、ともに取り組んでいただくようお願い申し上げます。

2010(平成22)年6月25日
旭川弁護士会 会長 富川 泰志

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