法務省は2018(平成30)年12月27日,大阪拘置所にて2名の死刑確定者に対し死刑を執行したことを明らかにした。
今回の死刑執行により本年中の死刑執行者は合計15名に上り,1998年11月以降では,2008年と並んで最多人数となった。昨年7月にはいわゆる地下鉄サリン事件などに絡むオウム真理教元代表松本智津夫(麻原彰晃)を含む元幹部ら,合計13人の死刑囚に死刑が執行されており,1か月に多数の死刑執行があったこと対して,国内は勿論,国際的にも厳しい批判の声が上がった経緯があり,昨年中には更なる死刑執行はないだろうという見方があった中での執行である。
結果,死刑執行は2012年12月に第2次安倍内閣が発足以降15回目,合計36名に上る。今回の死刑執行により,我が国が死刑存置国として,確たる意志をもって死刑の執行を継続するという姿勢が内外に明らかになった。
当会は死刑執行に対し繰り返し「死刑執行に抗議する声明」をあげてきた。その理由は,我が国において死刑事件でも誤判があったこと,死刑廃止は国際的な潮流となっており,我が国が死刑存置国であることによる条約締結等外交上の支障もあること等であり,今後も我が国で死刑執行を継続することには重大な問題がある。政府は死刑に関する情報公開やこれらの問題に対する社会的な議論を進展させるべきである。
日本弁護士連合会は誤判,冤罪の危険性や,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016(平成28)年10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきことを宣言した。
当会は,今回の死刑執行についても,繰り返し,強く抗議の意思を表明するとともに,前記人権大会宣言の趣旨に沿った全社会的議論を深め,この議論が尽くされるまでの間,少なくともすべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。
2019(平成31)年1月25日
旭川弁護士会 会長 井上 雄樹